撮影:フォトグラファーごとう
皆さまこんにちは。
バイヤーのかわいです。
6/14(火)より、Bunkamuraミュージアムで開催中の
【トワル・ド・ジュイ展】へ行ってきました。
トワル・ド・ジュイとは?
18世紀~19世紀にインドの木版プリントに影響を受け、
フランスで作られた布の事を指します。
日本では『ジュイの更紗(サラサ)』や『西洋更紗』と
呼ばれています。
トワル・ド・ジュイは多くの人々を魅了してきました。
その理由は色彩やデザインの美しさ、
目新しさだけではありません。
大航海時代によって東洋と西洋の文化が出会い、
新しい時代や価値観が生まれた事。
後にフランス革命をもたらす民主主義の潮流や、
産業革命が起きた事で工業が一気に機械化していった事。
激動の時代の中で、
人々が懐かしい田園風景や自然への憧れを抱いた事など。
トワル・ド・ジュイは様々な歴史的背景が
織り込まれ、現代でも愛されて続けている
テキスタイルと言えます。
トワル・ド・ジュイの素材「綿」がヨーロッパに
トワル・ド・ジュイが生み出される以前、
ヨーロッパの染織文化は、『織り』が主流でした。
フランス貴族は当時、
コルセットで締め付けた体に重たいシルクか
ウールのドレスを着ていました。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/マリー・アントワネット
高級感、重厚感はあるものの、
決して着心地の良いものでは無かったと思います。
一方アジアの染織は、
綿の薄い生地を染めたり、
プリントで色柄の表現をしていました。
ヨーロッパでは綿の原料となる綿花が
栽培出来なかったためコットン生地は普及していませんでした。
その後、コロンブスのアメリカ大陸発見が有名な大航海時代、
安全な航路を発見し船での貿易が盛んとなり、
東洋の染織品がヨーロッパに輸入されるようになりました。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/フランス東インド会社
アジアから輸入される染織品が、
ヨーロッパ貴族と綿との出会いでした。
こちらの絵は、別荘でくつろぐ
マリー・アントワネットを描いたものです。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/マリー・アントワネット
綿の軽やかなドレスに麦わら帽子。
コルセットで締め付けて華美な装飾で
着飾ったドレスとは一線を画した
優しさと美しさが漂います。
こうしてフランスでは、
アジアの染織品が爆発的に人気を博していきました。
しかしその流行は、
伝統的な絹やウールの生産者の反感を買い、
更紗の制作、綿の輸入、さらには着用することさえも
禁止されることになってしまいました。
トワル・ド・ジュイの誕生~ジュイ・アン・ジョザスの工場~
更紗の禁止は8年間続きました。
その禁止がいよいよ解かれようとする頃、
パリの工場から、「優れた*捺染(なっせん)技術者」
を要請する依頼がスイスの捺染工場に入りました。
*捺染(なっせん):布地に模様を印刷する染色方法。
依頼を受けたのはプリント技師、
クリストフ=フィリップ・オーベルカンプ。
オーベルカンプ
出典:http://toiledejouy.jp/
弱冠20歳の彼はパリに赴き、
1760年、ベルサイユ近郊の村、
ジュイ・アン・ジョザスに工場を設立。
そこで『トワル・ド・ジュイ』は生み出されました。
ジュイ・アン・ジョサスの工場
出典:http://toiledejouy.jp/
工場が設立された1760年から閉鎖する1843年まで、
人物を配した田園風景のモティーフや、
花が散りばめられた楽しいデザインのものなど
約3万点を超えるをテキスタイルのデザインが
生み出されたといわれています。
トワル・ド・ジュイの発展 ~デザイナーの起用~
オーベルカンプは、常に自身の工場の技術向上や
新しい技法を取り入れる事に意欲的だったそうです。
オーベルカンプが新たに取り入れたこと。
それは当時まだ〝テキスタイルデザイナー”という
概念が無かった時代に、画家として名声を得ていた
「ジャン=バティスト・ユエ」を筆頭デザイナーに起用したのです。
ユエは当時、すでに動物画家として、
王立アカデミーから称号を受けるほどの人気画家で
作品はルーブル美術館にも収蔵されているほどです。
工場の設立から10年ほど経った1770年ごろ
『トワル・ド・ジュイ』に繊細な銅板プリント
(銅板の表面を凹版にし、インクを流して印刷する方法)
が導入され、ユエの絵をプリントしました。
新たに導入された技法を
最大限に生かせるデザイナーを起用したことで、
トワル・ド・ジュイの名が世の中に一気に広まる
きっかけとなりました。
本展のみどころ
今回の展覧会で本国フランスから
初めて国外に持ち出されたという
当時の貴重なコレクションや、
トワル・ド・ジュイのインスピレーションの源となった
インド更紗や、古いタペストリー、
日本で独自に発展した和更紗などが展示されています。
テキスタイル好きにはたまらない、
豪華な展覧会になっています!
フランス革命・ナポレオン帝政時代などと
共に歩んできた「トワル・ド・ジュイ」の、
誕生から今日に至るまでの歴史には、
目を見張るものがあります。
わたし自身、歴史や美術、
そして何よりもテキスタイルが大好きなので
今回の展覧会は、激動のヨーロッパ史と
密接な題材だったこともあり
とても興奮してしまいました!
またマリー・アントワネットが愛した
トワル・ド・ジュイのドレスの断片が
展示されています!
約200年以上も前の〝布”をこの日本で見られるなんて
またとない機会なのでこちらも見どころです。
さいごに
遠いアジアの魅惑的なテキスタイルが
西洋にもたらされてから、
トワル・ド・ジュイをはじめとした西洋更紗は
独自の発展を遂げ、今なお世界中で愛されています。
貴族たちを中心とした歴史から、
庶民のための歴史や美術、
テキスタイルが生み出されるようになった
この時代は、とても語りつくせないものがあります。
当時の職人たちの努力や探求心が
今に繋がっていることを強く感じ
布を扱うお仕事をさせて頂いている今、
敬意を持って受け継いでいきたいと思いました。
ぜひご興味ある方はトワル・ド・ジュイの世界を
ご覧になられてはいかがでしょうか。
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<イベント詳細>
名称 西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展
会場 Bunkamura ザ・ミュージアム
開催期間 2016年6月14日(火)~7月31日(日)
10:00~19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
チケット料金 一般 1,400円、大学・高校生 1,000円、中学・小学生 700円 ※料金は全て税込価格です
公式サイト http://toiledejouy.jp/